アポロ計画に協力した生命科学者、ミズーリ大学名誉教授 トーマス D. ラッキー博士は、宇宙線という激しい放射線が地上の何百倍の強さでおそってくる中を月旅行するのはどうなのかと考えて、30年以上におよぶ調査研究と小動物実験をつづけました。その結果、放射線とからだとのかかわりについて権威ある学会誌 Health Physics 誌(1982年12月)に、200以上の参考資料を付けた大論文を発表しました。
私がこれを知ったのは1984年秋で、クリスマスと正月の休日中に読み終えて、怒りに近いほどの衝撃を受けました。低線量放射線を受けると生物は元気になり、増殖が強くなり寿命が伸びるというデータを示して、彼はこれを放射線ホルミシスと名づけました。
放射線はがんや白血病をひきおこし、遺伝的にも悪い影響をもたらすので少しでもよくない、自然放射線レベルに抑えるべきだと米国で教育され、原子力の安全性の仕事に従事してきた私は、米国電力研究所理事長のフロイド・カラー氏に次のような手紙を送りました。
ラッキー博士の論文コピーを同封して、これは世界の常識と原子力安全管理の基本と全く違っているので、米国はこの論文に対する責任ある見解を示す必要があると回答を要求したものでした。
カラー氏は私の手紙を持ってワシントンのエネルギー省に行き、エネルギー省(DOE)と電力研究所(EPRI)の共同で、ラッキー博士は真面目な人か狂人かを評価することを決めました。